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池田はるよしのメモ

論理学を中心に語ります。

問題を解く(2)【∀の範囲と∃との関係】

三浦俊彦著「論理学入門」の演習問題25を考える。

演習問題25

次の3つの命題の意味の相違をはっきりさせつつ日本語で表現してみよう。

(1)∀x ( xは脳死になる ⇒ xは臓器提供する ) ⇒ 平均寿命が1割増える

(2)∀x { xは脳死になる ⇒ ( xは臓器提供する ⇒ 平均寿命が1割増える )}

(3)∀x {( xは脳死になる ⇒ xは臓器提供する ) ⇒ 平均寿命が1割増える}

【まずは記号化】

  • Fx:脳死になる
  • Gx:臓器提供する
  • A:平均寿命が1割増える

とすると、

(1) ∀x ( Fx ⇒ Gx ) ⇒ A

(2) ∀x { Fx ⇒ ( Gx ⇒ A )}

(3) ∀x {( Fx ⇒ Gx ) ⇒ A }

 

【∀が命題関数だけなら楽】

(1)は∀のかかる範囲にAがないので、そのまま解釈すればよい。

∀x ( Fx ⇒ Gx )はAの十分条件

また、

∀x ( Fx ⇒ Gx )

≡ ∀xFx ⇒ ∀xGx

なので、

「すべての脳死になった人が臓器提供すれば、平均寿命が1割増える」

 

【全称と存在の関係】

(2)(3)は少しむつかしい。

これを解くためには、

(補1)∀x ( Mx ⇒ D ) ≡ ∃xMx ⇒ D

を理解する必要がある。

イメージしやすいように、

とすると、

ペレリマンがポアンカレの予想を解く前も後でも、

真であることがわかる。

実際証明すると、

----

〔証明〕

¬{∀x ( Mx ⇒ D ) ≡ ∃xMx ⇒ D}

≡ {∀x ( Mx ⇒ D ) ∧ ¬(∃xMx ⇒ D ) } ∨ {¬∀x ( Mx ⇒ D ) ∧ (∃xMx ⇒ D )}

⇒ {( ¬Ma ∨ D) ∧ (Ma ∧ ¬D )} ∨ { ∃x ( Mx ∧ ¬D ) ∧ ( ∀x¬Mx ∨ D) }

⇒ {( ¬Ma ∧ Ma ∧ ¬D ) ∨ ( Ma ∧ ¬D ∧ D )} ∨ {( Ma ∧ ¬D ) ∧ ( ¬Ma ∨ D) }

⇒ {( ¬Ma ∧ Ma) ∨ (¬D ∧ D )}

なので、矛盾。

よって、∀x ( Mx ⇒ D ) ≡ ∃xMx ⇒ D

----

 

【一人いたら全体が変わる】

(2)は(補1)を利用すると、

∀x { Fx ⇒ ( Gx ⇒ A )}

≡ ∀xFx ⇒ ∀x( Gx ⇒ A )}

≡ ∀xFx ⇒ (∃xGx ⇒ A )

つまり、

脳死した人の中で一人でも臓器提供すると、平均寿命が1割増える」

 

(3)は(補1)を利用すると、

∀x {( Fx ⇒ Gx ) ⇒ A }

≡ ∃x ( Fx ⇒ Gx ) ⇒ A

つまり、

脳死したら臓器提供するという人が一人でもいたら、平均寿命が1割増える」

 

【属人化をとらえる】

命題関数を定義しなおす。

  • Fx:プロジェクト要員である
  • Gx:期待通りの活躍をする
  • A:プロジェクトがうまくいく

とすると、

(1) ∀x ( Fx ⇒ Gx ) ⇒ A

「プロジェクト要員みんな、期待通りの活躍をすれば、プロジェクトがうまくいく。」

(2) ∀x { Fx ⇒ ( Gx ⇒ A )}

「プロジェクト要員のだれか一人でも期待通りの活躍をすれば、プロジェクトがうまくいく。」

(3) ∀x {( Fx ⇒ Gx ) ⇒ A }

「プロジェクト要員になったら期待通りの活躍をできる人が一人でもいたらプロジェクトはうまくいく。」

 

(1)はプロジェクト要員みんないい感じにいけば。。という計画時の理想形。

(2)はもう、プロジェクトの要員が決まっていて、あるスペシャルな要員が期待通りに活躍してくれたら・・・という願望。たぶん、多くの人が期待外れなんだろう。

(3)は、計画時にも関わらず、「あの人がいたら、このプロジェクトは絶対いける!」という類で、もう最初から属人的な体質になるんだろう。

もしくは、プロジェクト終了時に「あの人がいたら、このプロジェクトはうまく行けたのに!」という後悔なのかもしれない・・・