池田はるよしのメモ

論理学を中心に語ります。

問題を解く(1)【∃とその範囲】

三浦俊彦著「論理学入門」の演習問題24を考える。

演習問題24*1

次の3つの命題の意味の相違をはっきりさせつつ日本語で表現してみよう。

(1)∃x  ( xは殺人者である ∧ xは放置される ) ⇒ 社会が崩壊する

(2)∃x  { xは殺人者である ∧ ( xは放置される ⇒ 社会が崩壊する )}

(3)∃x  {( xは殺人者である ∧ xは放置される) ⇒ 社会が崩壊する }

 

【まずは記号化】

  • Fx:殺人者である
  • Gx:放置される
  • D:社会が崩壊する

とすると、

(1)∃x ( Fx ∧ Gx ) ⇒ D

(2)∃x { Fx ∧ ( Gx ⇒ D )}

(3)∃x {( Fx ∧ Gx ) ⇒ D}

 

【例化する】

(1)∃x ( Fx ∧ Gx ) ⇒ D

≡ ∀x ¬( Fx ∧ Gx ) ∨ D

これを例化する。この世に個体がa,bの二つだけしかないと限定すると、

¬( Fa ∧ Ga ) ∧ ¬( Fb ∧ Gb ) ∨ D

 ≡ {( Fa ∧ Ga ) ∨ ( Fb ∧ Gb )} ⇒ D

つまり、

「放置された犯罪者が一人でもいたら、社会が崩壊する。」

 

 (2)∃x { Fx ∧ ( Gx ⇒ D )}

これを例化すると、

Fa ∧ (Ga ⇒ D)

この場合はaにターゲットは絞られている。

aはすでに、犯罪者であるが、まだ、放置はされていない。

その点を含意すると、

「放置すると社会が崩壊するような犯罪者がいる。」

 

(3)∃x {( Fx ∧ Gx ) ⇒ D}

これを例化すると

( Fa ∧ Ga ) ⇒ D

こちらも、aというターゲットはいる。

が、放置された犯罪者にはまだなってなさそうだ。

その点を含意すると、

「放置された犯罪者になったら、社会が崩壊するような人がいる。」

 

【プロジェクトをぶっ潰すような問題要員】

命題関数の内容を変えると、

結構、現実に応用できる。

  • Fx:問題要員である。
  • Gx:自由にさせる
  • D:プロジェクトが崩壊する。

この場合、

(1)∃x ( Fx ∧ Gx ) ⇒ D

「一人でも自由な問題要員がいたら、プロジェクトは崩壊する。」

(2)∃x { Fx ∧ ( Gx ⇒ D )}

「自由にさせると、プロジェクトを崩壊させるような問題要員がいる。」

(3)∃x {( Fx ∧ Gx ) ⇒ D}

「問題要員になって、自由にさせたら、プロジェクトを崩壊させるような要員がいる。」

となり、結構、臨場感がでる。

 

【困った奴の対応方法】

そーなると、プロジェクトを崩壊させない施策を考えるのが、

管理者の仕事となる。

(1)は、要員全員に目を光らす必要があるが、

(2)や(3)は、ある程度、重点管理する対象が特定できそうだ。

(3)は、ある程度「こいつは怪しい」と思う要員を重点管理することになり、優秀なPMなら、ここをきちっとする。

(2)になると、もう問題要員が発生してしまった状況になってしまっている。この場合、そいつを管理せずに自由にさせると、たちまちプロジェクトが崩壊してしまう・・・

 

【プロジェクトが崩壊しても】

たとえば、上記(2)の状態になって、なおかつ、プロジェクトが崩壊しても、

問題要員aを自由にさせた管理者がわるいのだろうか?

[前提1]  Fa ∧ ( Ga ⇒ D )

[前提2] D

[結論] Ga ・・・aを自由にしたから?

 

≪証明≫

Fa ∧ ( Ga ⇒ D ) ∧ D ∧ ¬Ga

≡ Fa ∧ D ∧ ¬Ga

⇒ ¬(α ∧ ¬α) ・・・閉じない。

つまり、aを自由にしたのが原因とはいえない。

aを管理しすぎて、委縮させてaの実力を発揮できなかったとか、

プロジェクトの予算がなくなったから、プロジェクトそのものがなくなったとか、

たぶん、いろいろ理由があるんだろう。

けどけど、

大概は「aが悪いんだ!」

で終わらせてしまうことが、世間的には多い気がする・・・

*1:原著は「⇒」ではなく「⊃」